« 検察官の勾留請求に対する意見書 | トップページ | 取調べ1 »

勾留

<はじめてのかたは、トップページからお読み下さい>

逮捕は逃亡および罪証隠滅の恐れがある場合に行われるので、それらの恐れがなければ本来は被疑者を逮捕する必要はない。その場合は任意調べの後に、訴追相当と考えられれば書類送検されるべきものであるが、わが国では見せしめを狙った逮捕や、権力に逆らう人物を弾圧目的で逮捕する例が多い。

そもそも本件は、逮捕容疑となった被疑事件に対する嫌疑そのものがなく、被疑者に逃亡や罪障隠滅の恐れもないから、逮捕自体が違法である。
違法ではあるが、逮捕自体を争う規定は現行刑事訴訟法上には存在しないので、48時間の逮捕の拘束時間が失効する間際に行われる検察官の勾留請求を争うしか方法はなかった。
勾留請求に対する意見書を裁判所に提出したのも、予め被疑者側の事情を訴え、検察主導の偏った情報で安易に勾留を認める裁判を、けん制する意味合いからである。

だが、勾留の裁判は、実にいいかげんなものであった。
一応、被疑者の意見陳述の機会は与えられるものの、全くの形式だけで、とても陳述した意見を誠実に聞いて判断するというしろものではない。

私を担当した高橋信幸という裁判官は、30歳前後の非常に若い裁判官であった。
逮捕容疑となった事件につき、税務職員に殴りかかってもいないし、殴りつけるそぶりもしていない。カセットテープは税務職員に対してではなく、全く方向の違うところに投げたのだ。私はそう訴えた。
高橋信幸裁判官は、わかった、わかったと頷き、傍らの書記官に、
「カセットテープは、相手に絶対に当たらない場所に投げたと記録してあげておいて」
と、私の言い分を真剣に聞いているように言ったものの、その言葉と引き換えに書記官が、勾留を認め接見禁止の決定を記した書面を私に手渡すというあきれた結末であった。
予め決定の書類が出来上がっていたのである。陳述の機会は、ただ与えたという形式だけを整えたもので、何の意味もなかった。
専門家たる法曹の威厳と信念など、まるで持ち合わせていない軽々しい態度であった。

私は失望した。
もともと、勾留は認められてしまうとは思っていたが、本事件で最初に出会った裁判官がこれでは先が思いやられた。

翌日、勾留を認める裁判に対して、O弁護士から準抗告の申し立てがなされた。勾留の裁判を取り消し、検察官の勾留請求を却下する決定を求めたのである。

しかし、同日、準抗告は棄却された。
竹山、河地両財務事務官の供述調書をはじめとする一件記録によれば、被疑者が本件被疑事実にかかる罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がある。
一方、被疑者は暴行の事実はなく、公務の執行を妨害する意思もなかったと否認しているが、本件に至る経緯や犯行時の状況については、まだ詳細な供述をするに至っていない。
また、一件記録によれば、被疑者の作成した文書等の内容に沿って弁護人が主張する事情と、両財務事務官の供述内容等との間には相当の食い違いがあり、本件の適正な処理に当たっては、被疑事実だけでなく、被疑者に対する調査の経緯等の十分な解明が不可欠である。
これらの点の立証については、供述証拠に頼るところの大きい事案であるから、被疑者が関係者に働きかけ、被疑事実や情状事実につき罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由が認められるし、勾留の必要性を否定すべき特段の事情もない。
以上の理由により、本件準抗告を棄却するというものであった。

|

« 検察官の勾留請求に対する意見書 | トップページ | 取調べ1 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/145030/3463951

この記事へのトラックバック一覧です: 勾留:

« 検察官の勾留請求に対する意見書 | トップページ | 取調べ1 »