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保釈1

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平成16年3月4日。
O弁護士から請求した保釈を却下する決定書が、私の元に届けられた。

<保釈請求却下決定
被告事件 公務執行妨害
被告人に対する上記被告事件について、平成16年2月27日弁護人○○○○から保釈の請求があったので、当裁判所は、検察官の意見を聴いた上、次のとおり決定する。
主文
本件保釈の請求を却下する。
理由
被告人は下記4に該当し、かつ、諸般の事情に照らして保釈の許可をするのは適当と認められない。
平成16年3月3日
名古屋地方裁判所  裁判官 小 松 秀 大 >
となっており、記の4で罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある、と記載されていた。

保釈請求が却下されたことで、当初の予想どおり勾留が長期間に及ぶ様相が強くなってきた。
家族や友人のことも気がかりではあったが、当面は逮捕前から抱えていた役所の仕事の納期が迫っていたことが、何より気がかりであった。
新規の仕事は当然できなくなるから、出頭する前に、病気入院を理由にすべて断るように指示してきたが、取り掛かっていた継続中の仕事を途中で投げ出してしまうことは、仕事が減るだけでは済まされなかった。どんな理由があるにせよ、ビジネスマンとしては失格であり、責任感が欠落していると言わねばならない。

継続中の仕事のことは気がかりではあったが、すべての結果が出てしまうと、不思議なもので逆に気持ちが落ち着いてくる。
勾留されるかされないか、起訴か不起訴か、保釈されるかされないかという不確定要素を抱えていると、精神的に不安であるが、そういった当面の不確定要素がなくなると、どんな悲惨な現実でも、比較的すなおに受け入れ、環境に適合できる精神状態になるようだ。

接見禁止が解除されたため、昼頃、妻が面会に来た。
中学1年の長女と小学1年の次女が手紙を書いたという。私に渡してくれと言っていたらしい。

ひと時の面会を終えて房に戻ると、U氏が弁護士さんの面会かと訊ねてきたが、私はあいまいな返事をしただけだった。彼も起訴はされているが、国選弁護人がまだ決まっていない。
単調な拘束状態の留置場の生活では、他人の面会回数が多いだけでも、変な嫉妬心が生じてくる。それがわかっているだけに、自分の面会の話は極力避けるようにしていたのである。

午後になって、妻が差し入れていった娘の手紙が留置担当官から手渡された。
私は、U氏に背を向けるようにして、その手紙をこっそり開いた。
小学1年生の次女の字はたどたどしかった。
「おとうさんへ おとうさんげんき?ゆりはげんきだよ。おとうさんのゆめたくさんみたよ。たくさん。かえってきたゆめ。そのときはうれしかったよ。でもいつもゆめだからかなしい。でもしょうがないよね。 ゆりより」
「おとうさんへ もう3月すぎちゃったね。がんばってね。 ゆりより」
2枚目の手紙には、私と次女の絵が書いてあった。

その手紙を見たとき、思わず、堰を切ったように涙があふれた。もう、何十年も泣いていなかった。溜まっていた涙が、一気に噴き出したようであった。

「だんなさん、どげんしたと?」
後ろでU氏の声が聞こえた。
私の背中が、嗚咽で震えていたのかも知れない。
「いや、なんでもない」
と、あわてて言おうとしたが、言葉にはならなかった。

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