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冤罪の土壌2

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U氏は、指名手配されていることを知らなかった。
自転車の無灯火で職務質問を受け、話を聞くだけだという言葉を信じて近くの交番へついて行ったところ、逮捕され、そのまま移送されてしまった。

従って、所持金もわずかしかなく、着替えの衣類等の用意もない。留置場の運動時間に許されている好きなタバコの喫煙も、持ち合わせがないからできなかった。
留置場の生活は、3度の食事や寝具、洗面用具等の必需品は支給してくれるものの、それ以外にも何かと必要となる日用品も多い。
厳寒の2月である。暖房設備のない東警察署の留置場では、厚着をしていないと、とても過ごせない。
私など、夜寝るときでも、ズボンや靴下をはいたまま寝ていたものだが、着の身着のままで移送されてきたU氏には、着替えや防寒用の衣類がなかったのである。
拘禁された以上、日用品等の手配を誰かに頼まなければならないが、頼めるような身内や親しい知人もいなかった。となれば、取調べの担当刑事に頼むしかないのである。

「正直に言うんだな」
担当の警部補は、面倒をみてやるから、正直に話せというのである。
ところが、正直に話せば話すほど、罪状からは遠ざかった。当然である。
「まだ、正直に話しとらんな」
警部補は陰湿だった。
初犯の被疑者にとっては、法律の知識などほとんどない。
金を返さないこと自体が犯罪だ。工事に全く着手していないから、当然詐欺だと認定される。細かいところで否認すると、却って罪が重くなる。悪いことは言わないから、俺の言うとおりにせよ。被害金額からすれば、多分執行猶予がつく。一通りの供述調書ができたら、必需品を取り寄せるようにしてやるからと、タバコを勧めながら言葉巧みに誘導して、都合のよいように罪状を固めてしまったという。

「動機が弱いな」
事件当時、U氏の銀行口座には30万円ほどの残金があったため、当面の生活費にひっ迫して反抗に及んだという供述調書に、一度、検事が異議を唱えた。
だが、疑問点を指摘されると、その警部補は、また、もっともらしく供述調書を作り変えてしまったという。
次の検事調べのときなどは、U氏に供述を翻されないようにすぐ後ろで厳しく監視し、休憩時間の合間には、
「こう質問されたら、こう言うんだぞ」
と、細かく指示をする念の入れようだったという。

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