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冤罪の土壌1

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警察や検察の取調べは、冤罪を生みやすいようにできている。

同房のU氏も冤罪だ。
彼はもともとは九州の出身だが、名古屋で暮らすようになってから、すでに20数年経過していた。
市内で小さな会社を作って工務店を経営していたが、数年前に体調を崩し、医者にみてもらうと、B型肝炎と診断され、あと5~6年の命だと言われた。前途を悲観し、生活がすさんだ。
やがて、事業が破綻して妻と離婚し、子供たちとも別れてから、関東で一人孤独な生活を送っていたところ、警察に逮捕され、名古屋の北警察署に移送されてきたのだった。
彼は当初、なぜ逮捕されたか、わからなかったと言う。

被疑事件は、工務店を経営していて事業が行き詰まりつつあった当時のこと。
市内のある有力者から建物改装業務を受注し、300万円近い前受金をもらったが、すでに自転車操業に陥っていた彼は、その前受金の大半を他の返済に当て、わずかな残金を本件工事に着手するため、仕事を委託する下請業者に支払った。
その下請け業者が破綻し、受注した工事が施工できなくなり、彼の会社も、そのあおりを受けて倒産した。
業務を発注したその有力者は、前受金の回収が不能になったため、親しくしていた北警察署の署長を通じて彼を詐欺罪で訴えたというものである。

建築業界ではよくある話である。民事上の債務不履行の問題であって、刑事事件ではない。その有力者がU氏に工事を発注したのは初めてではなかったというし、だましてお金を取ったわけではない。詐欺罪など成立する余地はないというべきだろう。 

彼の取調べを担当したのは、30代前半の若い警部補で、今年警部の昇任試験を受けるという刑事であった。出世欲が強いことは、ノンキャリアながら20代後半で、すでに警部補になっていた事実が証明していた。
以前、「事件の真相を究明するというものではなく、自分の出世のためだけに、半ばだましのような手口で都合のよい供述を引き出させる警察官もいる」と、述べたことがあったが、それはU氏の取調べを担当したこの刑事のことである。

若い警部補は、警察官の誇りよりも警部の昇任試験を大切にしていた。試験に合格して警部に昇任するためには、仕事上のミスも許されない。
所属する署の署長を通じて被疑事件に取り上げられたU氏の事件を、検察の段階で不起訴にされてしまうような不手際だけは避けねばならない。一旦逮捕した被疑者が不起訴になれば、不当逮捕の印象を世間に与えてしまうことになりかねないからである。

日本の場合、自白を取り、もっともらしい証拠をつけて起訴に持ち込めば、裁判でひっくり返るようなことなどまずありえない。
警察が何が何でも自白に追い込もうとする背景には、こうした事情があった。

  

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コメント

ありがとうございます。
半兵衛さまには、お耳に入れたいこともあります。また専門知識もお持ちの事、今後アドバイスをいただければ嬉しく思います。
さて、姉歯の事件は、全容を隠蔽され、姉歯の私利私欲で、行われた事として終結しようとしています。このままでは、今後に遺恨を残し、ひていは生活の基盤である「住」が、脅かされることになります。
なぜなら、テレビの報道の実験などを御覧になり知っている方もいると思いますが、姉歯は全体的に強度を落とすように指示されたのではなく、地震の震度5弱で部分的に、たとえば2Fで崩れ、そして全体が瓦解するように強度を弱めるべく指示を出されたはずです。地震で潰れた様に見え、証拠は残らないといった者が、姉歯に指示を出しています。
組織に組み込まれた姉歯は、NOとはいえなかったでしょう。
NOイコールそれは死を意味するからです。
この事件は、相当に根が深いのです。だからこのまま、終わらせてはいけないのです。
まともな仕事がしたくとも、NOといえば、どのような仕打ちが待っているか。それが、彼らの組織です。
このまま彼らを野放しにすることは、危険です。
仮に彼らに協力をしても、姉歯のような仕打ちが待っています。

投稿: 婢将女(ひしょうじょ)日記 | 2006年9月23日 (土) 22時22分

コメントありがとうございます。
耐震偽装事件が一建築士の私利私欲の問題として片付けられてしまうことに、国民の多くが何ら疑問の声を上げていないことがとても不思議でなりません。
かっての住専問題、銀行の不良債権処理問題でもそうでしたが、張本人の権力者は批判の矛先をほかへそらして自分には責任が及ばないように巧妙に逃げるのが得意です。
事件の本質がどこにあり、責任の所在が誰にあるかを、我々国民は厳しく追及していかなければならないと思います。 

投稿: 管理人半兵衛 | 2006年9月24日 (日) 00時06分

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