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第一回刑事裁判

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平成16年4月28日、名古屋地方裁判所で第1回の刑事裁判が開始された。

傍聴席が30席前後しかない狭い501号法廷が、国税関係者で埋め尽くされた。
制服の女性職員もいた。
平日の勤務時間中である。一個人の公務執行妨害事件の裁判の傍聴が、国税職員の業務に含まれないことは明らかだ。
20~30名の職員が、全員休暇や早退の手続きを踏んで傍聴に来ているとは思われない。
国税、税務署の職員が、税金から支払われている給料をもらって、業務とは関係のない刑事裁判の傍聴に来ているのである。税金の徴収を仕事とする国税当局が、税金の無駄遣いを率先して行っているようなものだった。
関係者にとっては、それだけ関心の高い事件ということだろう。

この事実からしても、一個人が現場の税務署職員の公務を妨害した単なる公務執行妨害事件ではないことが、浮き彫りになった。

裁判官は、伊藤新一郎という裁判官だった。名古屋地裁の刑事部長だという。なかなかのタヌキだという評判があった。
検察官は、水野雄介という名の30歳前半の若い検事である。
まず、水野検察官が起訴状を読み上げた。
<起訴状
公訴事実
被告人は、平成16年1月23日午後2時25分ころ、名古屋市○○○○号室において、被告人の所得税等の調査に訪れた名古屋中税務署財務事務官竹山孝(当56年)に対し、「うそばっかつくな。」などと怒号しながら、その身体に向けて数本のカセットテープを投げつける暴行を加え、もって同財務事務官の職務の執行を妨害したものである。
罪名及び罰条
公務執行妨害   刑法第95条第1項>

起訴状朗読後、その若い検事は、起訴事実に沿った簡単な冒頭陳述を行った。

次いで、被告弁護側の陳述に移った。
まず、私が被告人として罪状認否を行った。
「私の起訴事実に対する認否は次のとおりです。
公訴事実記載の日時、場所において、竹山孝特別国税調査官と口論となり、私が嘘ばっかりつくなと発言したことはありました。また、私が口論の中途において、感情が高まって手に持ったカセットテープ1本を私の横にあったパーティーションに座ったままぶつけ、それによりカセットケースが割れたことはありました。
しかし、口論になったのは、竹山孝特別国税調査官が嘘ばかりつくことと、私に対する説明の途中で、話を打ち切って帰ろうとしたからです。
また、カセットテープ1本をパーティーションにぶつけたことは、怒りを物にぶつけたもので、公務を妨害する意識は全くありませんでした。」

次に、A弁護士が冒頭陳述書を朗々と読み上げた後、順次各弁護人から、起訴状に対する求釈明、公訴事実に対する弁護人の意見等が述べられ、被告人が無罪であることを主張した。
そして、被告人は無罪であり、そもそも、本事件は不起訴になってしかるべき行為であり、本件公訴の提起は、検察官が公訴権を濫用したものであるから、本件公訴を棄却する、との判決を求める旨を訴えた。

弁護側の席は年配の主任弁護人と二人の若手弁護士で結成した弁護団が占めているが、検察側の席は、見栄えのしない若い検事一人であり、見た目にはいかにも貧相であった。

この日の第一回の公判では被告弁護側は起訴事実を否認し、全面対決の姿勢を打ち出した。
法廷闘争は第二回目以降の証拠調べの場に移ったが、この日の初公判を見る限り、国税・検察の思惑通り、ことがすんなり運ぶようには誰の目にも映らなかったに違いない。

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平成16年(わ)第479号 公務執行妨害被告事件
被告人 
平成16年4月28日
名古屋地方裁判所刑事第5部A係 御 中
主任弁護人 
弁護人
弁護人 

冒 頭 陳 述 書

弁護人が証拠により証明する事実は以下のとおりである。

第1 本件の事実経過
1 平成16年1月23日以前の調査の経緯等
(1)被告人に対する税務調査と古賀調査官問題
平成15年8月ころより,<竹山特官>らは,被告人の所得税・消費税の税務調査を行っていた(以下,「本件調査」という)。
 被告人は,本件調査に積極的に応ずる姿勢を見せ,竹山特官の求めに応じ,資料を提供していた。
平成15年11月27日,中税務署所属の古賀調査官が,中川税務署員と名乗り,反面調査であるとして,被告人宅に執拗に電話をかけた一件(以下,「古賀調査官問題」という)があり,以降,被告人は,平成15年12月5日付けで中税務署長宛てに抗議を行ったが,一片の回答もなかった。
(2)竹山特官の言動と被告人の抗議
 平成15年12月12日,本件調査として,竹山特官が被告人事務所を訪れた。竹山特官は,事前には「支払利息の件で聞きたいことがある」旨述べていたが,被告人の事務所に訪れたときには,「調査を早く終わらせたい」「資料も出してもらえないから,銀行預金の反面調査で金の出入りを見て収入を出し,費用は同業者の率をもとに推計して所得を出した」(所得漏れについて)「分からないところは課税しないというわけにもいかないので,これらは全部所得漏れということにしてあるが,不服があれば異議申し立てや次の担当者に言えばいい」などと述べ始めた。
 被告人は,従来本件調査に協力し資料の提出にも応じており,被告人が述べた事実や提出した資料も竹山特官が十分吟味していないこと,同業者の率からの推計結果も不合理であることなどから,竹山特官の説明に納得がいかなかった。
 このため,被告人は,名古屋中税務署長宛てに内容証明郵便で抗議した。
 平成15年12月15日,竹山特官から被告人に電話があり,先日の金額で修正申告に応じるかと慌てた様子で尋ねられたが,被告人は本件調査は中途で不十分であり、説明らしき説明もなかったことと、正しい調査を行うよう署長に抗議している最中であること等を伝えてその電話を切った。
(3)面談の日程調整の約束
被告人は,文書での抗議が前回黙殺されたことに鑑み,古賀調査官問題,竹山特官の従来の対応の説明,本件調査の結果及び理由の説明を求めるため,古賀調査官,竹山特官同席のうえでの中税務署長との面談を申し入れ,中税務署総務課長(以下,単に「総務課長」という)は,しぶしぶ,「日程を調整して連絡する」と約束した。
平成15年12月17日,竹山特官が,被告人の留守中,被告人の事務所に臨宅通知書を置いて行った。臨宅通知書には,「ご不明の点の点があれば,12月19日(金)までに下記担当者まで連絡下さい」などと書かれていた。
 臨宅通知書を見た被告人は,不明の点は抗議書で詳しく述べており、かつ中税務署長を交えて質問することで日程を調整してもらっているにもかかわらずこのような文書を置いていくことに疑問を感じて,総務課長に電話をかけた。すると,面談の日程は明日連絡するとのことであり,次いで,被告人が竹山特官に電話をかけ,総務課長との前記会話内容を伝え,不明点の質問や修正申告についての考えは面談の際にする旨述べたところ,竹山特官は,「分かりました」と了承した。
 被告人は,この際の竹山特官との会話を録音していた。平成16年1月23日に竹山特官及び河地特官に再生して聞かせたのはこの録音テープである。
(4)中税務署の不誠実な対応
平成15年1月18日,総務課長から,被告人に電話があったが,日程調整の前提であった古賀調査官,竹山特官,中税務署長との面談ではなく,総務課長が1人で被告人に会うとのことであった。
 被告人は,総務課長が約束を反故にしたことを追及したところ,同人は約束自体を否定した。
 さらに,被告人が「署長に会うということで竹山さん(竹山特官)にも了承してもらっている」と述べたところ,総務課長は,竹山特官に確認するでもなく,言下に否定したため,被告人は,前記の録音テープを電話口で再生して,総務課長に聞かせたところ,総務課長は黙ってしまった。
 結局,総務課長及び竹山特官の約束は,平成15年12月20日になっても守られず,日程調整の結果の連絡もなかったため,被告人は,同日,国税庁長官宛てに,本件調査について,中税務署に対し,公正・適正な税務調査を行うとともに,古賀調査官,中税務署長,竹山特官らの懲戒を求める請願を行った。
(5)平成16年1月23日に説明を行うことの約束
 平成16年1月15日,被告人事務所の郵便受けの中に,明日17時までに連絡がない場合には,更正通知をする旨の竹山特官からの臨宅通知書が入れてあった。
 翌日,被告人は,総務課長に電話をかけ,従来の経緯を糺したところ,総務課長の回答は,税務調査はうち切る,署長にも会わせない,調査所得額が変わることもない,しかし調査結果の説明だけは竹山に正しくさせるというものであった。
 被告人は,この回答に納得できなかったが,説明があるだけでも一歩前進と考え,平成16年1月23日午後2時に説明してもらうよう依頼し,了解を得た。  2 平成16年1月23日のできごと
(1)被告事務所の内部の様子
 平成16年1月23日のできごとが起こった被告人事務所の内部の様子は,別紙図面1のとおりである。
 本件事実経過に関する限りでは,東側の入り口から入ったところが玄関であり,付近の「壺」と記載されているところに,竹山特官が破損した壺が置かれていた。
 竹山特官,河地特官が案内され,被告人と話をしたところが南側のうち,パーティションで区画された部分である(以下,「応接室」という)。応接室の東側にはパーティションがない部分があり,これが応接室の入り口となる。
 玄関と応接室の境には,反時計周りに,応接室側に開く扉がある(以下,「扉」という)。
その他,被告事務所の内部の様子は,詳細に立証する予定である。
 竹山特官らが被告人事務所を立ち去るまでの間、被告人事務所には、被告人、竹山特官、河地特官のほか、被告人の妻しかいなかった。
(2)竹山特官が席を立つまで
 平成16年1月23日午後2時ころ,竹山特官と河地特官が被告人の事務所を訪れ,被告人の妻が応接室に案内し,その後被告人が着席した。この際の被告人,竹山特官及び河地特官の位置関係等は,別紙図面2に示すとおりであった。
 なお,この際,被告人は,前記カセットテープと空のテープ2本,テープレコーダー,カメラを持ってきていた。
 挨拶の後,中税務署長との面談の件が問題となり,竹山特官が,被告人との平成15年12月12日の被告人事務所での会話,同年12月17日の電話での会話内容をいずれも否認したので,被告人との間で,言った,言わないのやりとりとなり,被告人は,前記カセットテープを再生し,竹山特官と河地特官に聞かせた。
 竹山特官は,カセットテープに録音された自らの会話内容を聞かされても,なお否認を続けたため,被告人は,この日に予定されていた本件調査結果の説明についても,後で話を変えられるおそれがあると思い,録音することを申し入れた。
 すると,竹山特官は,説明をテープで録音するなど,普通の状態じゃあない。そんなことでは説明はできない。調査を中止する」と怒ったような口振りで立ち上がり,応接室から立ち去ろうとした。
 被告人は,竹山特官が,きっちり説明すると約束したにもかかわらず,録音されては不都合であるという態度を示し,立ち上がって応接室の入り口に向かって歩き始めたため,咄嗟に,竹山特官を,カメラで撮影した。
 この時の状況について,竹山特官,河地特官は,名古屋簡易裁判所平成16年(ハ)第750号損害賠償請求事件(同事件は,現在名古屋地方裁判所に移送され,同庁平成16年(ワ)第<1335>号として係属している。以下,「別件民事訴訟」という)において提出された同人らの陳述書(以下,単に「陳述書」という)において,被告人がカメラで撮影を行ったため,竹山特官が席を立った旨虚偽の供述をしている。
(2)応接室の外に出た竹山特官とのやりとり
 竹山特官は,応接室の外に出て,一旦は扉を開けたが,振り向き,応接室の入り口の手前まで戻ってきた。
 このときの被告人,竹山特官,河地特官の位置関係等は,別紙図面3に示すとおりであった。
 竹山特官と被告人との間で,被告人が写真を撮影したこと,竹山特官が嘘をついたこと,古賀調査官問題,被告人の留守に臨宅通知書を置いていく手口,被告人の携帯電話の番号を知っているのに電話をしてこないこと等について口論があった。
 この口論の中で,竹山特官は,被告人が写真を撮影したことについて,「そんなことをすると,調査を打ち切って更正処分を行いますが,いいですか」と述べ,河地特官が古賀調査官問題について,古賀調査官を弁護する発言を行った。
(3)被告人がカセットテープを投げた状況
 携帯電話についてのやりとりで,竹山特官が被告人の携帯電話の番号を知らない旨嘘をついたため,被告人は,「嘘をつくな」と言いながら,ソファの肘掛けの上に置いてあったプラスチックケース入りカセットテープ1本を手に取った。
 このときの被告人の心境は,竹山特官が嘘をついたため,かっとなった気持ちを,手近にあったカセットテープという物に当たったものであった。
 被告人は,手に取ったカセットテープ1本を,応接室の内側のパーティション南東角付近をめがけて投げつけた。カセットテープ1本は,やや北に狙いがそれ,パーティションのほぼ中央に当たり,プラスチックケースが割れて,破片がソファの上に落ちた。 
(4)カセットテープを投げた後の状況
 被告人がカセットテープを投げた後、竹山特官は、被告人に対し、携帯電話に電話をかけられると営業妨害になると被告人が述べていた旨述べた。
 被告人は、「私が携帯電話の番号を教えたとき、会議中のような時はすぐに出られないからと言ったら、竹山さん、あんた、まあ、この電話にかけることはあんまりないですけどね、と言ってたじゃないか」「だいたい、今日はきっちり説明するという話じゃなかったのか。もともと、説明などしたくなかったんだろう。だから、難癖つけて調査を切り上げ、更正処分するつもりだったんだろう」と反論し、河地特官に視線を向けた。
 その隙に、竹山特官は、原告に背を向け、扉をくぐって玄関に向かった。
 この際、被告人と河地特官は応接室の中にとどまっていたが、玄関からガシャーンという音が聞こえたので、被告人は、「何をしたんだ」といいながら、玄関に向かった。このときの被告人、竹山特官、河地特官の位置関係等は、別紙図面4のとおりである。
(5)竹山特官らが被告人の事務所から退出していった状況
 被告人が玄関にたどり着くと、竹山特官の足元に、割れた壷の破片が落ちていた。
 被告人は、竹山特官に対し、「なぜ壷を割るんだ」と詰問したところ、竹山特官は、「私割ってませんよ」と言い訳をするや、玄関のドアを開けて外に出ようとした。
 被告人は、「壷を割っておいて、弁償もせずに逃げるのか」と述べたが、竹山特官は、無言で被告人事務所から退去した。
 河地特官は、被告人の後から応接室を出て、被告人に「テープなど投げてはいけませんよ」と声をかけた後、壷を割ったことについては何の弁明もしないまま、竹山特官に続き、被告人事務所を立ち去った。
 竹山特官は、被告人に嘘を追及されて論破され、証拠まで作成されることを恐れて応接室から逃げ出し、また壷を割ってしまい責任を追及されたため、これを免れるために、被告人事務所から遁走したものであり、河地特官もこれに追随したものである。
(6)その後の経緯
 被告人は、平成16年1月24日付け通告書をもって、国税庁長官に対し、従来の請願が誠実に対応されず放置されていたことや壷破損の件につき対応を求めたが、何ら応答がないため、平成16年2月2日、名古屋簡易裁判所に対し、壷破損による損害の国家賠償を求める別件民事訴訟を提起した。
別件民事訴訟においては、平成16年3月1日付けの竹山特官、河地特官の陳述書が提出されている。これらの陳述書には、前記のほか、本件事実経過に関し、客観的事実と矛盾する虚偽の供述がなされており、保釈請求却下に対してなした準抗告に対する決定(裁量保釈を認めるもの、平成16年3月4日)においては、同人らの「細部にわたる供述調書が作成されている」との事実が現れているため、同人らの供述経過も含め、本件訴訟の進行に応じ、適時弾劾する。

第2 被告人に対する身柄拘束、起訴に関する事情
 被告人は、平成16年2月7日、中警察署に出頭したところ、逮捕され、平成16年2月9日、勾留決定がなされ、接見禁止処分がなされた。
 同日中に、中警察署員が被告人事務所から証拠物を収集しており、また竹山特官、河地特官とも、ベテランの税務署員であって、被告人の働きかけによって、供述を変更するおそれはなかった(ここでいう「供述の変更」とは、被告人に不利益に虚偽供述を行うことは含まないことむろんである)。
 被告人に対する取調べは、被告人の身柄拘束中、ごく短時間であり、被告人の言い分について詳しく尋ねることもなかった。
 平成16年2月19日付けの勾留延長の裁判に対する準抗告を棄却する決定においては、「本件の起訴不起訴を決するにあたっては、被疑者、被害者及びその他関係者の取調べなどが不可欠」であり、「これらの者についていまだ細部にわたる検察官調書の作成に至っていない」とされているにもかかわらず、被告人については、細部にわたる検察官調書は作成されなかったし、被告人の妻に対しては、一切取り調べがなされないまま、平成16年2月27日に公訴が提起された。
 この時点で、被告人に対する身柄拘束及び本件公訴の提起は、被告人の罪証隠滅を防止するためのものではなく、被告人による民事上・行政上の責任追及を妨げ、ないしこれに報復するためのものであったとするほか、合理的な説明は不可能となった。
 

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