愛知県との仁義なき闘い:その2
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私が怒鳴ると、
「まあまあ、先生」
と、近くにいた職員が間に入ってきた。
窓口の担当者より、年が10歳ほど上であろうか。
私たち二人のやり取りを聞いていたらしく、険悪な空気を察してすかさず仲裁に入ってきたのである。
その職員は、窓口の若い担当者を奥に下げた。
そして、担当の者が言葉が過ぎて申し訳なかったと、私に頭を下げてきた。
窓口の担当者に侮辱された思いはあったが、丁寧に謝罪されると、私もそれ以上言えなかった。今日のところは、引き上げたほうがよさそうだった。
「何かあれば連絡してください」
そう言って、私は会釈し、県庁を後にした。
ところが、これが大事件に発展したのである。
二三日後、北沢鑑定士(仮名:以下氏名はすべて仮名)から電話があった。私の所属する地価公示の分科会の幹事である。
「きみ、県で問題を起こしたそうじゃないか」
非常に慌てた様子だった。
「すぐ、謝りに行こう。もちろん、わしも行く」
彼は、何も訊かずにそれだけ言った。
問題を起こしたというが、聞くと、北沢鑑定士は何があったのか、そのとき事件の事情を全く知らなかったのである。
私が事情を説明しようとすると、
「事情など重要ではない。土地利用調整課が怒っている。すぐに謝りに行かないと大変なことになる」
と言うのである。
事情も聞かずに謝れとは何事だ!
おまえも、連中とぐるか!
そう言いたかったが、言葉を選んだ。
「謝りに行かなきゃならないことはしてません」
私は、簡潔に概略を説明した。
そして、侮辱されたのは私の方であり、私こそ、土地利用調整課の人間に謝ってもらわなければならない立場だと訴えた。
すると彼は、言った。
「きみの気持ちはわかるが、我を張ってると、大変な不利益を蒙るよ。県に楯突くと、地価調査の仕事を外されるだけでなく、地価公示(公示価格)の仕事もできなくなるし、鑑定の仕事自体できなくなるんだよ。相手に非があろうがなかろうが、謝った方が得なのだ」
更に、
「きみのために言ってるんだよ」
と、くどくどと何度もその言葉を繰り返した。
人のことより自分の立場を心配して言っていることがよくわかるだけに、その言葉が鼻についた。
「地価調査を外されようが、仕事がなくなろうが、謝る必要のないものは、謝れません。私がそう言ってたと、言っておいてください」
私は、突き放すように電話を切った。
こんなやり方をしてくるとは。
上司らしき職員の仲裁で、窓口の担当者との口論の一件は、一応収まったものと思っていたが、非常に執念深く、陰湿だった。
電話を切ってから、横車を押すような役人の行動に、抑え難い腹立ちが沸き起こってきた。
と同時に、権力を背景とする人間のもたらす、気味の悪い不安感と恐ろしさも覚えた。
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