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警察官の地道な仕事ぶりに高い評価を

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宮本警部遺族に叙勲伝達

東京都板橋区の東武東上線で女性を保護しようとして電車にはねられ死亡した警視庁板橋署常盤台交番の宮本邦彦警部(当時53=巡査部長から2階級特進)への緊急叙勲の伝達式が1日、板橋署であった。

式には宮本警部の妻礼子さん(53)と長男篤史さん(20)が出席。礼子さんらに正7位と旭日双光章の位記・勲章が手渡された。礼子さんは「あらためて夫の行為を誇りに思います。これまで全国から寄せられたお見舞い、激励、弔意など温かいご芳情に心から感謝しています」とのコメントを出した。
                      2007年3月2日 日刊スポーツ


宮本警部の冥福を祈り、同署や交番に記帳を寄せた人は9600人に達し、警視庁にも事故発生直後から、宮本警部の回復などを祈る電子メールや電話などが約370本寄せられており、メッセージを寄せた人は計約1万人に上るということも伝えられていた。

宮本警部は、生前からその仕事ぶりと人柄により、地域住民にも好かれ、市民の生命と財産の安全に大きく貢献していたという。
が、その仕事ぶりと人柄が広く知られ、高く評価されたのは、皮肉にも亡くなってからというのが、返す返すも残念でならない。

だが、宮本警部だけでなく、地域住民から高い信頼を得る仕事を日々地道に行っておりながら、警察幹部からほとんど評価されていない現場の警察官が多くいる現実にも、我々は目を向けなければならない。

もう、20年ほど前のこと。
私は、三重県の尾鷲市方面に鑑定の仕事で出かけたことがあった。
当時は、高速道路も整備されていなかったので、名古屋から尾鷲まで車で数時間かかった。

評価対象地が複数で、山間部の物件もあり、帰路に着いたのが遅くなった。夜の峠道はわかりにくい。ナビも携帯電話もない時代である。

車でいくら飛ばしても、町が出てこなかった。夜の10時近くになっても、まだ、山中の峠道を走っていた。どうやら、道に迷ったらしい。
疲れと眠気と空腹で、これ以上運転できない状態に陥った。私は、心細くなり、途方にくれた。

その時である。駐在所の灯りが見えたのだ。
声をかけると、しばらくして奥から朴訥とした若い警察官が出てきた。30歳の半ばぐらいだろう。
出てくるまで多少の時間がかかったのは、すでに休息を取っていたからかもしれない。


私は、事情を説明し、食事をして宿泊できるところを尋ねた。
その警察官は、私の素性の概略を尋ねた後、電話をして宿泊できる民宿を探してくれた。
だけでなく、今から案内すると言う。

これで宿泊場所は確保できた。だが、こんな時間に、食事ができるだろうか。
「できるじゃろう」
私が尋ねると、その警察官が答えた。

彼の自家用車と思しい車の後について、民宿に着いた。
部屋に案内され、一息ついたが、しばらくすると、民宿の係りの者が、申し訳なさそうに食事を切らしてしまったことを伝えに来た。
そして、
「先ほどのおまわりさんが、食事するところをご案内するとのことです」
と言い、しばらく待つように言われた。

その警察官の先導で着いたのは、とある集落の食堂だった。
「民宿まで1人で帰れるかいの」
心配そうに、彼は訊ねた。
「もう、だいじょうぶです。道を覚えておりますので」
私は礼を言って、彼を帰した。

その食堂で、遅くなった夜食を注文して待っていると、隣の席で一杯やっていた地元の者が声をかけてきた。
「あのおまわりさん、親切じゃろう?」
1人が言うと、向かい側の者も杯を持ったまま話しかけてきた。
「若いのに、よく働いてくれる。休んどるときも、なんかあれば惜しまず動いてくれる。そういう費用なんかも、ほとんど持ち出しだよ。本署の連中など、そんなことぜんぜんわかってないんだ、大変だよ。地元の者は、みんな感謝しとるけどね」
そう言って、その者は杯を煽った。

翌日、民宿を出て、私はそのまま帰ってしまった。
駐在所に寄って一言礼を言おうと思っていたが、仕事が立て込んでいたため急いで次の現場に向かったのだ。
仕事が一息ついたら、礼状を出そうとも思っていたが、それも失念してしまった。


だが、20年以上も前のことながら、朴訥としたその警察官の当時の厚情は、今でも昨日のことにように、はっきり覚えている。

上下関係の厳しい警察組織で階級を上げるには、一にも二にも、昇任試験に合格することが条件である。
失礼な言い方かもしれないが、私が厚情を受けた三重県のその警察官も、おそらく階級は巡査部長どまりではないかと思っている。

日頃の業務をなおざりにし、有休をしっかり取って昇任
試験に専念し、階級を着実にあげていく警察官が多い中、彼や宮本警部のように、地域住民の生命と財産の安全のために日夜奔走し、昇任試験を受けられないまま、生涯、巡査長や巡査部長で現役を終える警察官もいるのである。

最近、警察官による犯罪が日常茶飯事になっているが、殉職による階級特進ではなく、現役中の仕事ぶりで評価する制度を設けなければ、警察官の質は、ますます悪くなっていくだけではないだろうか。

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